こんにちは!
ブログまで訪問ありがとうございます!!
ここは主にコミティアで活動中の二人組小説サークル、
Love&ShineのShineこと、水瀬輝(みなせひかる)のブログです。
イベントの参加情報や、新刊既刊案内を主に載せています。
たまにブログ上で小説を上げることもありますが、基本イベント参加で小説を発表してます。
通販も始めまして、お試し読みページも作ってますので、
良ければのぞいてみていってくださいませ。
ツイッター実はやってます(笑) @virtuoso0505
出没率低めですが、こっちよりは多いかと(笑)
今までの創作ジャンルは
『タイムスリップ時代もの』『悩める高校生』『異世界トリップ』『ファンタジー』『ドタバタ学園コメディ』『不良』『片想い』『中高生向けヤングアダルト』
などなど。
書きたいものに飛びついて書いた結果です。
すべて基本はコメディ、ハッピーエンドですので気軽にお手に取っていただけると……!!
プロ目指してますので、感想、ご指摘などいただけるととてもうれしいです!!
最近出版社に投稿しているのは小学校高学年から中高生向けの児童書のジャンルで、
逆にコミティアでは違うタイプを書くことが多いかも。
落っこちたのを改稿してコミティアに出すこともありますので、
徐々に児童書が増えるかもしれません。
こんな感じの自分ですが、今後ともよろしくお願いします!!!
ブログまで訪問ありがとうございます!!
ここは主にコミティアで活動中の二人組小説サークル、
Love&ShineのShineこと、水瀬輝(みなせひかる)のブログです。
イベントの参加情報や、新刊既刊案内を主に載せています。
たまにブログ上で小説を上げることもありますが、基本イベント参加で小説を発表してます。
通販も始めまして、お試し読みページも作ってますので、
良ければのぞいてみていってくださいませ。
通販のページへはこちらから。
お試し読みページへはこちらから。(整備中)
ツイッター実はやってます(笑) @virtuoso0505
出没率低めですが、こっちよりは多いかと(笑)
今までの創作ジャンルは
『タイムスリップ時代もの』『悩める高校生』『異世界トリップ』『ファンタジー』『ドタバタ学園コメディ』『不良』『片想い』『中高生向けヤングアダルト』
などなど。
書きたいものに飛びついて書いた結果です。
すべて基本はコメディ、ハッピーエンドですので気軽にお手に取っていただけると……!!
プロ目指してますので、感想、ご指摘などいただけるととてもうれしいです!!
最近出版社に投稿しているのは小学校高学年から中高生向けの児童書のジャンルで、
逆にコミティアでは違うタイプを書くことが多いかも。
落っこちたのを改稿してコミティアに出すこともありますので、
徐々に児童書が増えるかもしれません。
こんな感じの自分ですが、今後ともよろしくお願いします!!!
2009年12月11日
おさなごころ。その3
おさなごころ ep3
『夏の日/後編』
休みの日は起きるのが遅い。夏休みであれば大抵昼過ぎまで寝ている。姉に連れられた買い物先で幸村光一郎(ゆきむらこういちろう)と偶然会った翌日も、立川良次(たつかわりょうじ)は寝られるだけ寝ているつもりだった。けれどゲームの連射かというぐらいに鳴り響いたインターホンに、さすがの良次もたたき起こされた。
誰かが出たらしく、音はすぐに鳴り止んだ。時計を見るとまだ十時。良次にとっては『まだ』十時だった。
そのまま布団をかぶろうとするが、弟の純也(じゅんや)が部屋にやってきて叶わなかった。
「兄ちゃん、お客さん」
「誰だ。姉貴はいないのか」
「じゃなくて、兄ちゃんに」
「おれに?」
家に来るような相手は思い浮かばなかった。しいて言うなら学校の担任ぐらいだ。
「昨日の人だよ。リビングにいてもらってるけど、部屋に上がってもらう?」
「昨日って、幸村か」
「うん。昨日会った人。仲直り、した?」
良次は眉根を寄せた。仲直りなどしていない。そもそもケンカしたとも思っていない。何かが幸村の怒りに触れたのはわかったが、何が触れたのかも、何故大声で馬鹿といわれたのかという理由もわからなかった。
彼の言動は、わからないものが多い。教えていないはずのこの家にどうやってきたのかも謎だ。
「下にいく」
「おれいないほうがいい?」
「・・・・・・別に」
「わかった。部屋にいるね」
純也は心得たように笑ってうなずく。良次があいまいに返しても、いつも本当に望んでいることを察するのだ。良次は弟のそんなところが素直にすごいと思っている。
純也は自分のランドセルから練習帳を取り出すと、机に向かい始めた。この部屋は二人の共有だ。姉と兄には一部屋ずつ与えられている。二人も良次が中学に上がったら一人ひとりの部屋になる予定だ。
良次は着替えようと布団を出たが、今着ているものも短パンにティーシャツで、これから着替えるものも短パンにティーシャツであることを考えると、面倒臭くなってやめた。
あくびをこぼしながら部屋を出ようとしたとき、「仲直りしなよ」と純也に言われて、良次は首をかしげた。何故そこにこだわるのだろうかというのと、直す仲があるように見えたのだろうかという疑問が浮かんだ。
リビングに入る前に一応洗面台で顔だけは洗った。ドアを開けて一番に、ソファの背から生えている跳ねた頭が見える。くるりとその頭が回転した。
「あ、良次。おっす。もしかしておはよう?」
「ああ」
「おはよー」
ソファは入り口とダイニングを背にして二人がけのものがL字型に置かれている。囲まれるようにしてローテーブルがあり、その向こうの壁側にテレビがおいてある。ゲームをする時は床に座る。
良次ももう一方のソファに座ろうとして、テーブルの上に置かれたコップに気がついた。純也が幸村に出したのだろう。中の麦茶が三分の一まで減っていた。
良次ものどに渇きを覚え、ダイニングと繋がるキッチンに麦茶とコップを取りに行く。
ソファに座り、麦茶を一杯飲んで、幸村のコップにも注ぎ足した。
「あ、ありがと」
「で」
「で?」
コップを手に持った幸村が首をかしげる。自分の家に他人がいることに違和感を覚えるが、その相手が幸村であることにはあまり違和感はなかった。
「何しにきたんだ」
幸村が顔をうつむかせて、コップをテーブルに戻した。
「謝りにきた」
「謝りに?」
意味がわからず、良次はおうむ返しに尋ねてしまった。幸村はうつむいたままこくりとうなずく。その跳ねた髪のごとく、幸村の話はどこへ行くのかわからなかった。
昨日怒っていたのは幸村だった。怒らせたのは自分だ。なのに何故、幸村が謝りに来るのかわからない。しかも、朝早くにインターホンを連打して。
「昨日、言いすぎてごめん」
良次は黙った。正確には何を返していいのかわからなかった。基本的に、会話は苦手なのだ。
窓は閉めきって冷房をかけているため、リビングは静かだった。ふとした拍子に時計の音が耳に入ってくると、中々離れなかった。
「・・・・・・昨日怒ってたのはお前だよな」
良次がようやくかけた声に、幸村は顔を上げた。再びこくりとうなずく。
昨日の怒りっぷりと、今日の落ち込みっぷりが結びつかない。怒った理由もわからないが、謝る理由もわからない。かといって、自分が謝るというのもおかしいと思っていた。
「何で怒ったんだ?」
幸村は再びうつむく。しばらくして、手を伸ばしてコップを取った。顔を上げずに、すするように麦茶を飲む。観察していて、良次は鳥みたいだと思った。
「・・・・・・うらやましくて」
「何が」
「兄弟。なんか、良次はずるいなあって。だから、怒ったけど、ほんとは逆恨み」
見上げるように、幸村は上目遣いで良次を見てきた。良次はしばらく眺めた後、「・・・・・・わからない」と呟きながらダイニングに首を巡らせた。
「ひど・・・・・・」
幸村の非難の声に、良次は視線だけを戻す。ソファの背もたれに腕を乗せてよりかかった。
「わからない。おれはお前じゃない。そもそも何故、わからなきゃいけない?」
「うん?」
「気になるといえば確かに気になる。だけど、何を思おうと、そいつの勝手だ。その、『さかうらみ』をしたとしても、本人の勝手だろ。何で謝るんだ」
「でも、傷ついたり、しない?」
「しない」
「じゃあ、怒りもしなかったの? 馬鹿って言われて?」
のぞきこむようにして問われて、良次は昨日の情景を思い出した。少しむっとしたが、怒るというより、疑問の方が大きかった。
「別に。それに、幸村が何を思おうが、何を言おうが、幸村に変わりはないし」
「自分には関係ない?」
「ああ」
「・・・・・・そっか」
幸村は再びうつむいて、麦茶をすすった。一口だけで今度はすぐに顔を上げる。
「でもそれなら、おれが悪いって思ったんだから、ごめんって言うのもいいよな」
聞かれて、良次は眉根を寄せた。確かにそうだ。そこまでは気づいていなかった。
「そうだな」
「うん。昨日はごめん」
幸村はまた頭を下げた。良次は少し、居心地が悪かった。
再び沈黙が場を支配した時、玄関の方から「ただいまー」という声がした。同時に階段を駆け下りてくる気配がする。今家にいるのは自分と幸村以外は純也だけのはずだから、当然純也のものだろう。帰ってきたのは姉の彩香(さやか)だ。幸村も気づいて、ドアを振り返った。同時にドアが開く。
「お出迎えしなさいよ良次! 光(こう)くんはいらっしゃい」
「お、おじゃましてます」
良次にほえた後、幸村には猫なで声だった。さすがの幸村も少し押され気味に頭を下げた。良次は姉の出現に顔をしかめる。
「姉貴、部活は?」
「ないわよ。今お母さんのとこに忘れ物届けに行ったの」
「あっそ」
「ちょっと、麦茶ないじゃない!」
「あ、お姉さん、こっちです」
「ありがとう」
冷蔵庫をのぞいたようで、キッチンの方でわめいた彩香に、幸村があわてて届けに行った。自分が行ったら確実に殴られる場面だ。何故こんなものを欲しがるのだろうかと良次は再び思った。あからさまな仮面に気づいていないとは思えなかった。
「あ、そうそう、昨日聞いてて思ったんだけどね」
「はあ」
彩香と幸村の会話がキッチンから聞こえてくる。冷蔵庫を開け閉めする音は麦茶をしまう音だろうか。良次はついていないテレビに視線を向けながら、自分のコップに残っていた麦茶を飲みきってしまおうと口をつけた。
「あなた、うちに嫁に来なさいよ」
姉の声が耳に届いた瞬間、麦茶を吹き出しそうになった。かろうじて防いだが、鼻がつんとする。
「そうすれば兄弟よ。家族になるわよ」
「何言ってんだ」
良次もあわててキッチンに顔を出した。得意げな顔の彩香と、呆然とした顔の幸村。困惑してしきりに首をかしげている純也がいた。
「何って。光くん、兄弟欲しいって言ってたでしょ」
「ああ? てめえが結婚すんのか」
「また『てめえ』って言ったわねえ?」
「でも姉ちゃん、嫁って言った。お婿さんじゃないの?」
「わたしは光くんと結婚する気なんてないわよ。だから、良次の嫁にもらえって言ったの」
「はあ?」
「姉ちゃん。男同士じゃ結婚できないよ」
「純ちゃん、世の中には事実婚という籍を入れない結婚もあるのよ」
「ふうん・・・・・・?」
純也が納得したような、納得できないような顔をする。姉の突飛な言動には慣れているつもりだった良次も、さすがに頭が痛くなった。
「それ以前の問題だろ。ていうかなんか、それは、えっと、なんか、違うだろ。結局兄弟にならないし・・・・・・」
「あ、本末転倒、でしょ。この間辞書見てたら出てきた!」
「たぶんそれだ」
純也の助言に良次はうなずく。しかし、幸村の目が輝いているのに気づいて、ぎょっとした。手を組んで、まるでお祈りのポーズだ。
「お姉さん、素晴らしいアイディアです。これからはお姉さまと呼ばせてください」
「じゃんじゃんお呼びなさい」
最後に「ほほほ」と高笑いを決めた姉に、良次はあきらめの溜息をついた。
一緒にお昼を食べて行きなさいと誘う姉の言葉を振り切って、良次は幸村を玄関まで連れ出した。姉の話に悪乗りしていた幸村も特に抵抗はしなかった。苦笑を浮かべて「せっかくですけど」と断っていた。
「あー楽しかった」
靴を履いて立ち上がった幸村がそんなことを言うので、良次は眉根を寄せた。
「姉貴はクラスメイトのようには扱えないぞ」
「そんなことする気ないさ」
少しむっとしたように幸村が答えた。答えてから、彩香が乱入する前のことを思い出したようで、少し表情を硬くした。良次も思い出してお互い沈黙が落ちる。けれど長くは続かなかった。おそらく、玄関までは冷房が効いていないからだろう。
幸村が口を開く。
「あのさ、一個だけ聞いていいか?」
「なんだ?」
良次が見下ろすと、幸村は少し視線をゆらしたが、すぐに戻ってくる。
「おれが、何を思っててもいいって言ったよな。それほんと?」
「ああ」
「それは、おれが何を思ってても、おれを見てくれるってことでいいのか?」
良次は眉根を寄せた。見てくれるというのが、よくわからない。けれどこれからも自分が幸村を観察することになるのは、おそらく間違いなかった。
「ああ」
「そっか。・・・・・・うん、そっか」
幸村が笑った。ちらちらと、目をかすめるものはあったが、それが『影』なのか表なのかわからなかった。
玄関を開けると、熱気が一気に押し寄せてきた。
「まだ七月なのに、やんなるなー」
顔をしかめて幸村がぼやく。改めて観察して、暑そうなのはその飛び跳ねた頭じゃないかと思うが言わなかった。
「じゃ、今日はありがとな。そだ。宿題終わんなかったら写させてやるよ。国語算数理科社会、この間のテスト百点とったもんね」
得意げに笑って、幸村は空気のゆれる外へと飛び出していった。こいつそんなに頭よかったのかと、良次は目を丸くする。
跳ねていく後ろ姿を、良次は角を曲がって見えなくなるまで観察していた。
2009年12月07日
おさなごころ。その2
おさなごころ ep2
『夏の日/前編』
夏休みに入った。
全国の小学生のほとんどがそうであるように、立川良次(たつかわりょうじ)もまた、一ページも宿題に手をつけていなかった。基本的に外で遊ぶのが好きではない良次は、一つ年下の弟、純也(じゅんや)を引っ張って、リビングで長兄である良一(りょういち)のゲームで遊んでいた。持ち主である中学三年生の良一自身は、昨日から家に帰ってきていない。
夏休みに入った。ということは、当然学校はない。教室にも行かない。クラスメイトに会うこともない。
幸村光一郎(ゆきむらこういちろう)を観察することもない。
別に観察したいわけではなかったのだが、自分が動かしている天然パーマのキャラクターを見て、ふと今何をしているだろうかと考えた。誰かクラスの奴らと遊んでいるのだろうか。夏開けに何をするのか、作戦でも練っているのだろうか。そんなことを考えていたら、いつの間にかテレビのスピーカーから試合終了のゴングが鳴り響いていた。
「兄ちゃん、途中で手止まってたでしょ」
良次の短パンの裾を引きながら、純也がおずおずと口にする。良次は無言で画面を見つめた。弟の操っていたお団子頭の美女が、ピースをしながら一回転している。隅の方には倒されたテンパの男。別に足を変に曲げてはいないが、幸村を思い出した。
「もう一回やる?」
「いや、レースにしよう」
格闘ゲームのカセットを抜くと、テレビの裏に置かれている段ボール箱から、ロードレースのカセットを探した。
「一兄(いちにい)、昨日も帰ってこなかったね」
「そうだな」
「どこ行ってるのかな」
「さあ」
ようやく目当てのカセットを見つけて機械に差し込んだとき、突然リビングのドアが開いた。入ってきたのは高校二年の姉、彩香(さやか)だった。良次たちは四人兄弟だ。
「お帰りなさいは!?」
入ってくるなり怒鳴り声を上げる彩香に、良次はただ視線を返した。純也はあわてて立ち上がって制服姿の姉に駆け寄る。
「気づかなくてごめんね姉ちゃん。お帰り」
「んー、純也君いい子! ただいまぁ」
自分の胸の高さの弟を、彩香はがばっとばかりに思い切り抱きしめる。純也は苦しげにもがいた。
「それに比べて良次ったら可愛くない子」
放してくれともがいている純也を気にも留めず、彩香は純也の肩越しに良次をにらむ。良次は返す言葉もなく溜息をついた。
「さ! 出かけるわよ」
思う存分純也の抱き心地を堪能したあと、彩香は唐突に宣言した。
「どこに?」
素直に首をかしげる純也に、良次は再び溜息をついた。
「十分後、着替えて下りてくるから、準備しておきなさい」
彩香は上機嫌に微笑むと、質問には答えないまま嵐のようにリビングを出て行った。良次はそれを見送ると、ゲームの電源プラグをコンセントから外した。「どこに?」と尋ねた純也も、本当はわかっていたのか、答えないことで気づいたのか、冷房のスイッチを切りに行く。
姉の買い物に無理矢理付き合わされるのは、別に珍しいことではなかった。
宣言どおり十分で完璧に化粧も施した姉は、かなり上機嫌だった。
果たして女子高生が弟二人を引き連れて買い物をするものか、良次は時々疑問に思う。だが他人の家は知らないので、こんなものかとも思う。
今日は夏のサンダルとスカート、それから水着がお目当てらしい。相手はいるのかと尋ねたら殴られた。
場所は家の近くの大型ショッピングセンター。姉の財布に余裕があると、二駅ほど離れた街中まで出て行かなければならなくなるので、良次は目的地を聞いて若干救われた気分になった。なってから、それはおかしくないかと思うが、とりあえず姉に逆らうことは出来ない。というより強制連行のため抵抗は意味を成さない。
良次の担当は基本的に買ったものの荷物持ちのため、適当に近くのベンチでぼんやりとしていた。純也は彩香に引き回されて、あれはどうだこれはどうだと意見を求められている。一生懸命答えている弟を見て、良次はよくやるなと感心していた。
姉と弟を目で追うのも飽きた良次は、行きかう人を眺めはじめた。親子づれ、友達グループ。女子だけ、男子だけが多いかと思えば、男女混じってやたらとテンションの高い奴らもいた。年齢層も一通りいる。夏休みだからだと気づいたのはかなりしてからだった。さすがに大人の男性は少ない。
しばらくして、人の波の向こうでひょこひょこと跳ねているものに目が留まった。すぐに誰か気づく。一学期間の観察は伊達ではない。
向こうはしばらく良次に気づかなかった。どこかぼんやりとした様子で、一人で歩いていた。まとう空気がどちらかといえば自然教室の時に近い。何をしに来たのか気になった。
間に人がいなくなった数歩の距離になって、ようやくベンチに座る良次に気づいたようで目があった。数度目を瞬かせた後、幸村光一郎は目をネコのように細めて近づいてきた。
「どうしたこんなとこで。デートか、女子とデートか?」
良次の隣に浅く腰かけながら、幸村は訪ねてくる。良次は首を横に振った。
「買い物に無理矢理」
「母ちゃんの?」
「姉の。弟も一緒だ」
「お前、兄弟多いな」
「四人。姉兄弟」
「へえ、いいな」
「別に。上はうるさいぞ」
夏休み前、良次と幸村の関係は少し変わった。一方的に観察するだけだったのが、たまに会話するようになった。たまに、幸村が話しかけてくるようになったのだ。
だからといって仲良くなったのかといえばそうではない。幸村の教室内の騒ぎには良次は参加したことないし、幸村も入れることはない。
「おれ一人だからさー。うらやましい」
どこにいるのかと聞いてくるので、良次は斜め前にある店を指差した。幸村は目を細めながら「へえー似てるー?」と笑った。
「お前は何しに来たんだ?」
「ん? 別に。なんとなくふらふら」
「ふらふらわざわざ?」
「何だそれ」
幸村は笑うと、ベンチの上で伸びをした。続けて首を曲げて関節を鳴らす。「んー。眠い」と欠伸を漏らす幸村を、良次は観察した。表面上は、普段と変わらない。けれどチラチラと気になるのはやはり〇・〇三秒の影のせいか。最近、それよりも長い気がするが。
「・・・・・・人ごみに来たくて。歩いてたらここに来てたんだ」
よくわからなかった。それこそ、わざわざする必要がわからない。
それきり、会話は続かなかった。良次はうつむいている幸村を観察した。相変わらず髪は跳ねている。もしかしたらテンパにくわえて寝癖もあるのかもしれない。
変わったことといえば、観察しているのを隠さなくなった、というのもある。
幸村は良次が見ていても何も言わない。気づいていないわけがないのはわかっている。時々、観察することを許されているような気がして嫌だった。
それでも見てしまう自分が、嫌だった。
「あら、良次に友達なんてめずらしい。いじめてんじゃないでしょうね」
良次は視線を幸村から正面に戻した。幸村も同時に顔を上げる。微笑む彩香と、その影に隠れて立つようにして純也がいた。買い物は済んだらしい。純也の手にショップバッグが握られている。
「・・・・・・別に友達ってわけじゃ」
「ひっでえ良次。おれたち親友だろー? 初めまして、お姉さん」
にっこりと、いつものように幸村は笑顔を向けた。ひょこんと立ち上がって頭まで下げている。
「あら可愛い。こんな無愛想と仲良くしてくれてありがとね」
いつものようと思った笑顔は、良次の心に大きな違和感を残していった。
「じゃあ良次、お姉さんたち戻ってきたし、おれ行くな」
「あら、なんなら一緒にお買い物しましょう。あとでアイスくらいおごるわよ」
良次は姉の誘いに眉根を寄せた。幸村がなにか言う前に口を開く。
「誰がてめぇの荷物持ちなんか進んでやるか」
「お姉様に向かって『てめぇ』?」
「荷物持ちは否定しないんだな」
「しないわよ。だからアイスおごるって言ってんじゃない。それより『てめぇ』を正しなさい」
「めったにそんなことねえくせに」
「当たり前でしょう。兄弟は無償奉仕よ」
良次はベンチに座ったままにらみあげた。どうせ立ってもまだ身長差は勝てない。二人はしばらくにらみ合った後、彩香が鼻を鳴らして顔を逸らした。上二人の険悪なやり取りをどうしたら良いのかとおろおろとしていた純也はほっと息をついて、彩香の服の裾をつかんだ。
「あんたに聞いてんじゃないのよ。この子に聞いてるの」
仁王立ちした彩香が「ねえ?」と幸村に話を振る。ぼんやりと二人のやり取りを見ていた幸村は、目をぱちくりとさせた。
「お姉さん、欲しいなあ」
「はあ?」
「いいなあ、良次。ホントうらやましい」
「まあ嬉しいこと言ってくれるわねえ」
彩香の機嫌が一瞬にして上機嫌に戻った。良次は胸の辺りがもやもやして、気持ちが悪かった。
「お前、ちゃんと聞いてたのか? 姉なんて、いや、こいつなんて弟を弟とも思ってないやつだぞ」
「あらやだ、ちゃんと弟だってわかってるわよ。だからこそなんじゃない」
あっけらかんと言う姉に、良次は一瞬絶句した。普段はもうあきらめている部分だ。けれど、幸村がうらやましいというのにはうなずくことができない。
「・・・・・・いいようにこき使うし、ちょっと機嫌が悪いと当り散らすし、良いことなんて何にもないぞ」
「良次に言われたくないよ」
ふっと真顔になった幸村が、良次を見つめた。めずらしく、にらむという表現の方が合う。良次は戸惑った。『影』が完全に表に出てきた気がした。
「それは、いるから言えることだろ。わかってるの? わかってて言ってるんならひどいよね。一人じゃない。絶対に一人じゃないってことだろ。お前わかってない!」
幸村の顔は、真顔から、皮肉げにゆがめられ、最後は何かを我慢するような必死な顔になっていた。良次は思わずベンチから立ち上がる。
幸村が何かを怒っていることは理解できたが、何に怒っているのか理解できなかった。眉根を寄せて、幸村を見つめる。
長いこと観察をしてきた。けれど、彼の考えていることがわかったためしはない。
「馬鹿!」
幸村は吐き捨てると同時にきびすを返して、走って行ってしまった。純也が服の裾を引っ張ったことで、良次は我に帰る。
「兄ちゃん、追っかけなくていいの?」
「あんたにも馬鹿なんていってもらえる友達ができるとは、今日は楽しい一日ねえ~」
友達と呼べるほど親しくなった覚えはないし、なるつもりもない。幸村の頭はもう、見えなくなっていた。
「次、行くぞ」
良次は純也の手から荷物を奪った。彩香は当然とばかりに次の店に向かって先頭を歩く。
「兄ちゃん、ケンカしたら仲直りしなきゃダメだよ」
弟の言葉に、良次は幸村が浮かべていた表情を思い出して顔をしかめた。
2009年12月01日
サブリミナル効果
「おさなごころ。」のep1に出しました、サブリミナル効果についての解説です。
本文中にもうちょっと詳しく書ければよかったのですが、技量が足りず、すみません。
相肩に言われて気付きました(汗)。
遅くなってごめんよ(相肩へ)。
サブリミナル効果。
それはマインドコントロールの一種です。
無意識下、潜在意識に刺激を与えることで起こる効果のことを言います。
良次も読んだ、映画館の実験。
ある映画館で、映画の上映中、〇・〇三秒、「コーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」
というメッセージの入ったの映像を繰り返し流します。
もちろん肉眼では確認できません。
その映画の上映終了後、コーラとポップコーンの売り上げが増したという。
そういう実験です。
ぶっちゃけ、この実験の信憑性は疑われていますが(苦笑)。
科学的な証明はまだできていないそうですが、
映画やテレビ放送などでの使用はほとんど禁止されています。
ちゃんと認識はできていないのだけれど、
頭の中に残る違和感が体や心に影響を及ぼす。
良次は幸村にそんなサブリミナル的な違和を感じ、視線を送ってしまうのだと、
・・・・・・本人による言い訳です。
ま、子供ですので。
何かがあると、別の何かのせいにしてしまうのですよ。
まあ、そこは子供だけの話ではないですが。
幸村君の笑顔に違和はあるので、半分正解なのです。
別に気になるからみていた、でいいのに。(俺が言うな)
素直になれない子は大変です。
別にテーマというわけではなく一つの比喩表現でしたので、
さらっと読み流していただいてぜんっぜん構わないです。
ただ、書き手からの情報の少なさはあんまりでした・・・・・・。
書きすぎてもうざったくなってしまいますけどね。
以後気をつけたいと思います。
さき、言ってくれてありがとう!!